七夕の晩、そろそろ子供らとベッドに行く時間。
夫が子供たちの歯磨きをしている間に、私は自分の歯を磨いてしまおうと、
ハミガキチューブを押して、歯ブラシに歯磨き粉を付けました。
その時、グラッと来ました。
「地震…」
歯ブラシを持ったまま、子供たちのところへ行き、
両手で二人の肩をギュッと引き寄せ、部屋の中を見回していました。
その間夫がテレビをつけ、地震速報が流れ、23区は震度3。
千葉では5弱。
揺れはすぐに収まりました。
ドキドキしながらそのまま歯を磨き、子供たちとベッドへ。
長男の質問に答えました。
「地面の下にはね、大きな石がたくさんあるの。
その石がね、たまにゴツンコしちゃうの。
そうすると、地面が揺れて、地震が起きるの。
いつ、どこが揺れるかは、わからないの。だから怖いの。
保育園でも避難訓練してるでしょ?
保育園にいるときに揺れたら、ママがすぐに迎えに行くから、先生と待っててね?」
それ以来、ハブラシに歯磨き粉を付けるたびに、
揺れているような錯覚が起きます。
印象的な出来事と結びついている物と言えばあとは、私にとっては
チキンラーメンです。
そうですね、あれ以来なんだか、チキンラーメンを食べると痛いような気がしてしまって、
あまり食べる気がしません。
2013年9月某日、夜23時ころ。
お腹壊したかな~…?なんかお腹痛いな~…寝るかな…
いや…痛いな…まさかな…まだ予定日まで2週間以上あるし。
いや…これはやっぱりそうかな…
あ…8分おき。きっかり8分おきだな…
「もしかするかもー…」
「えー?まだ2週間以上先だよー…ズルズル…ズルズル…」
「でもきっちり5分おきだよ~…イタタ…また来た…イタタ…」
「ズルズル…ズルズル…前駆陣痛ってやつじゃない?ズルズル…
よく帰されるって…ズルズル…書いてあったよ~」
「…4分だ…とりあえず病院、電話してみる」
「前駆陣痛だと思うけどな~…ズルズル」
「とりあえず来てってー、タクシー呼んで~」
「は~い…ズルズル…あーうまかった!」
妻が陣痛で痛がっているとき、夫はリビングでチキンラーメンを食べていました。
ベッドで横向きに寝ながら時計を見て時間を書き留めながら、
私はずっとチキンラーメンの匂いに包まれていました。
あ、別にぜんぜん食べてるのはいいんですよ。
横で背中をさすっていてほしかったとか、そういうことは全く思いません。
ただただ、チキンラーメンの匂いがしていた、ということが印象的だっただけです。
いまでも家族の笑い話です。
その後タクシーで夫と一緒に病院へ向かい、7時間後には長男が元気に生まれました。
私はチキンラーメンの匂いを嗅ぐと、
陣痛の痛さがよみがえってきて、でも長男に初めて会えた日のこそばゆい感じも同時によみがえって、
なんだか背中がムズムズするのです。
↑水面相手に拳法の練習だそうです。
そして地震と言えばあの日、
私は姉と、アンティーク・ショップで楽しく買い物をしていました。
お店の女性に話しかけられ、日本から来たと言うと、
「え…?日本…?
地震、大丈夫?すごいことになってるのよね?」
「ああ、日本は地震、よくあるんですよ~…
アメリカ人は地震に慣れてないからねーハハハ…」
「いや、違うと思うわよ。ニュースで見たけど、すごいことになってるわよ。
あ、パソコンで見る?」
そこで初めて、あの東北の津波の映像を見た姉と私は、言葉を失い、
まずは東北であることから両親の無事は確認し、急いで姉の家に帰り、
パソコンで詳しい情報を確認したのです。
ええ、つまり、私はあの揺れは体験しておりません…スミマセン…
アメリカにいる姉を訪ねていました。
いまでも夫は、
「あの時はこんなもんじゃなかった!」
と言います。
そりゃそうでしょうね。
2日後に帰国して中野のひとり暮らしの部屋に帰ったら、
ブラウン管のテレビが逆さまに床に落ちていて、
割れたグラスが床に散乱していたので、靴を履いたまま部屋の中でしばし呆然としました。
なにかを愛するには、それを失う可能性を実感すればよい。
作家・詩人:G.K. チェスタトン
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いつも応援いただき、本当にありがとうございます。
本当は不安でたまりません。